そらテクノロジーは、放射冷却で室温を下げる特許技術です。建物の構造だけで、涼しく快適に過ごせる家づくりを目指しませんか?
株式会社ソロモン

【カーブミラー開発物語-1】結露を”予知”するセンサーの発明。完璧なアイデアと、たった一つの欠点

これまでの試行錯誤で、私はある根本的な問いに立ち返りました。 「そもそも、結露は一晩のうち、いつ、どのような瞬間に発生するのか?」

この謎を解き明かすため、私は夜な夜な屋外にレコーダーを設置し、日没から明け方までの気温と湿度の変化を記録し続けました。そして、膨大なデータの中から、ある決定的な事実を発見したのです。

それは、結露が「気温がぐっと下がる、まさにその瞬間」に集中して発生するということでした。

空気中に溶けていられる水分の量(飽和水蒸気量)は、気温によって決まります。気温が急に下がると、それまで気体でいられた水分が空気に溶けていられなくなり、液体、つまり「結露」となって姿を現すのです。


 

■ ひらめき:「結露する瞬間だけ」温めればいい

 

この発見は、私に大きなひらめきを与えました。 「結露する、その危険な瞬間だけミラーを少しだけ温めてやれば、最小限の電力で結露を防げるのではないか?」

これなら、小さな太陽電池とバッテリーでも十分に実用化できるはずです。

しかし、ここにも問題がありました。結露が「発生してから」温めるのでは、氷を溶かすのと同じで、かえって大きな電力が必要になってしまいます。目指すべきは**「結露する直前」**に先手を打つことでした。

そこで考えたのが、カーブミラーの結露を予知するセンサーです。


 

■ 結露予知センサー、その仕組みとは

 

以前の観測から、私は「空を向いている面は、垂直な面よりも早く結露する」という事実を掴んでいました。放射冷却によって、空に向かって熱が奪われやすいからです。

この原理を応用し、図のようなセンサーを考案しました。

カーブミラー本体とは別に、斜め上を向いた小さな鏡をセンサーとして設置します。この小さな鏡は、ほぼ垂直なカーブミラー本体よりも、必ず先に結露するはずです。

  1. 赤外線センサーが、この「おとり」となる鏡の表面を常時監視する。

  2. 小さな鏡が結露した瞬間、それは「カーブミラー本体も、もうすぐ結露する」というサイン。

  3. その信号を受け、カーブミラー本体とセンサーの鏡、両方の裏側に貼られたヒーターに通電を開始する。

  4. やがてセンサーの鏡の結露が消えたら、カーブミラーも安全な温度になったと判断し、両方のヒーターへの通電を停止する。

この仕組みによって、一晩で約1分間の通電が3〜5回。驚くほど小さな消費電力(20cm四方の太陽電池で十分でした)で、カーブミラーが結露する直前にだけピンポイントで温度を少し上げ、結露を完璧に予防することに成功したのです。


 

■ 対処療法の限界

 

しかし、この完璧に思えたアイデアも、実用化には至りませんでした。

道路に設置される機材は、最低でも10年間はメンテナンスフリーで動作することが求められます。このセンサーは、構造上、どうしてもゴミや汚れが溜まりやすく、長期間の安定動作は望めませんでした。

結局のところ、これも「結露」という現象に対して後から手を加える対処療法の域を出ていなかったのです。根本的に放射冷却というものを理解し、現象そのものをコントロールしなければ、本当の解決にはならない。

この痛感こそが、私をさらに深い研究へと駆り立てることになります。

今日はここまでにしておきます。

(参考:特願平6-91229)