そらテクノロジーは、放射冷却で室温を下げる特許技術です。建物の構造だけで、涼しく快適に過ごせる家づくりを目指しませんか?
株式会社ソロモン

【カーブミラー開発物語-2】地面と空の間に隠された「温度の層」という大発見

これまでの研究で、カーブミラーが曇る根本原因は「放射冷却」によって鏡面が外気より冷えてしまうことだと突き止めました。ならば、その温度低下を防ぐことができれば結露は発生しません。

今回は、その解決策として「空気(風)」を利用する、全く異なる2つのアプローチについてお話しします。


 

■ 発見:地面と空の間に隠された「温度の層」

 

屋外で気温のデータを集め続ける日々の中で、私はある興味深い事実に気がつきました。

「放射冷却が起こる晴れた夜、空気は地面から順に冷えていく」

つまり、地表に近いほど温度は低く、ほんの少し上に目を向ければ、そこにはもっと暖かい空気が存在するのです。

これは単なる体感ではありません。確かめるため、建物の2階から異なる高さに高感度の温度計を垂らして同時に測定したところ、わずか1m高さが違うだけで、空気の温度が1℃も高いという驚くべき結果が出ました。放射冷却の夜、私たちの周りには、目には見えない「温度の層」ができあがっていたのです。


 

■ 発見:地面と空の間に隠された「温度の層」

 

屋外で気温のデータを集め続ける日々の中で、私はある興味深い事実に気がつきました。

「放射冷却が起こる晴れた夜、空気は地面から順に冷えていく」

つまり、地表に近いほど温度は低く、ほんの少し上に目を向ければ、そこにはもっと暖かい空気が存在するのです。

これは単なる体感ではありません。確かめるため、建物の2階から異なる高さに高感度の温度計を垂らして同時に測定したところ、わずか1m高さが違うだけで、空気の温度が1℃も高いという驚くべき結果が出ました。放射冷却の夜、私たちの周りには、目には見えない「温度の層」ができあがっていたのです。


 

■ 実験①:天空の恵みを利用する「上方吸気方式」

 

この発見は、私に新たなひらめきをもたらしました。

「もし、この1m上にある1℃暖かい空気をパイプで引き込み、ミラーの裏に送り込めば、電力を使わずとも鏡面を温められるのではないか?」

これは、ヒーターのようにエネルギーを消費するのではなく、すぐそこにある「自然の熱」を少しだけ拝借するという、究極のエコなアイデアです。早速、実験に取り掛かりました。

写真の通り、右側のミラーに上方1mから空気を吸い込むパイプを取り付けたところ、結果は見事に成功。パイプで暖かい空気を吸い込むだけで、結露と霜を効果的に防ぐことができたのです。

しかし、この方式は実用化には至りませんでした。理由は極めて単純です。空気を吸い込むための**「穴」**です。屋外に長期間設置されるカーブミラーにとって、この穴は虫や枯葉、ゴミなどを吸い込んでしまい、いずれ必ず故障につながる致命的な欠陥でした。

原理は正しくても、実用的ではない。この失敗は、また別のアイデアへと私を導くことになります。 (参考:特願2000-297710)


 

■ 実験②:周囲の空気で冷えさせない「強制対流方式」

 

上方吸気方式は、暖かい空気を取り込む「パッシブ(受動的)」な方法でした。次にご紹介するのは、ファンを使って強制的に空気を動かす「アクティブ(能動的)」なアプローチです。

その仕組みは非常にシンプルです。

「ミラーの背面にファンを取り付け、周囲の空気を強制的に吸い込み、鏡面の裏側に流し続ける」

「なんだ、そんなことか」と思われるかもしれませんが、これには明確な物理的な裏付けがあります。夜間、放射冷却によって冷えようとする鏡面に対し、ファンで強制的に風を送り込むと**「強制対流」が起こり、鏡面の温度はほぼ外気温と同じ温度**に保たれます。

たとえ湿度が高い夜でも、外気温そのものが結露点(露点温度)より極端に低くなることは稀です。そのため、鏡面の温度を外気温に近づけておけば、結露を根本から抑えることができるのです。


 

■ 結論:どちらのアプローチにもあるメリットと課題

 

この2つの「風」を利用する方法を比較してみましょう。

  • 上方吸気方式(パッシブ)

    • メリット: 電力消費が非常に少ない。自然の温度差を利用する。

    • 課題: 吸気口の目詰まりなど、長期的なメンテナンス性に大きな問題がある。

  • 強制対流方式(アクティブ)

    • メリット: 非常に確実かつ強力に結露を防止できる。

    • 課題: ファンを動かすための電力供給と、フィルター清掃などの定期的なメンテナンスが必要。

カーブミラーの結露という身近な問題一つをとっても、解決策には多様なアプローチがあり、それぞれに一長一短があります。

この「上方吸気方式」の失敗と、「強制対流方式」の考察が、さらに次の、そして最終的な発明へと繋がっていくのです。