早朝、放射冷却の強さを測るため空の温度を放射温度計で測定してみました。約2年間、晴れた日は早朝測定し写真に記録しました。その中で、代表的な写真を掲載します。白い雲は水蒸気であり温度が高いです。青空は水蒸気が少なく宇宙空間へつながっているため低い温度が表示されます。この、放射温度計の指向性は15°です。できるだけ指向性の強い機種を選びました。これは周囲からの赤外線入射を排除するためです。
放射温度計で青空を測ると、測定される温度は非常に低くなります。これは、放射温度計が空気の温度(気温)ではなく、測定対象物から放射される赤外線エネルギーを基に温度を算出する機器だからです。
青空の測定値について:
青空(特に晴天時)は、大気中の水蒸気や二酸化炭素などの気体による赤外線の吸収と放射が比較的少なく、宇宙空間からの非常にわずかな赤外線と大気層からのわずかな放射エネルギーを測定することになります。
一般的な放射温度計は、大気による影響が少ない8~14 の波長帯(「大気の窓」と呼ばれます)に感度を持つように設計されていますが、青空のような背景を測ると、測定レンジの下限近く、またはそれ以下の非常に低い温度(-30℃以下など)を示すことが多いです。
これは、測定範囲に存在する物質(この場合は大気)の放射率が非常に低いことと、その物質の温度が低いことによるものです。
放射温度計は、放射冷却の強さを間接的に測るのに利用できます。
放射冷却は、地面や物体が夜間に宇宙空間へ熱(赤外線)を放射することで冷える現象です。晴れた夜や風の弱い夜に強くなります。
放射冷却が起きている時、地面や物体の表面温度は、気温よりも大幅に低くなります。
放射温度計を地面や草、車の屋根などの表面に向ければ、その表面温度を非接触で測定できます。
この測定値と、一般的な接触式温度計などで測った気温(地表から約 の空気の温度)との差が大きいほど、放射冷却が強いと判断できます。
ただし、放射冷却の厳密な強さを示す指標としては、「有効放射量」などの気象学的なデータが必要になります。しかし、実用的な観測としては、放射温度計による表面温度と気温の差を比較することで、その場の放射冷却の影響の度合いを把握できます。

2024年10月15日早朝の空温度 -24.3℃

2024年10月17日早朝の空温度 -22.4℃

2024年10月17日早朝の放射冷却室の天窓

2024年10月18日早朝の空温度 -14.5℃

2024年10月20日早朝の空温度 -41.4℃

2024年11月9日早朝の空温度 -47.5℃

2024年11月10日早朝の空温度 -47.8℃

2024年12月10日早朝の空温度 -51.3℃

2025年1月18日早朝の空温度 -56.8℃

2025年6月12日早朝の空温度 -26.0℃

2025年6月18日早朝の空温度 -9.1℃
以上